尚絅学院大学

人文社会学類 お知らせ

【それって、どんな学問?】メディア研究とは何か

2023/02/01

メディア研究とはどんな学問か(菊池 哲彦)

各出版社が刊行している新書の一部

各出版社が刊行している新書の一部

 私は、メディア文化を社会学の立場から研究しています。「メディア文化を研究する」とはどのような研究だと思いますか。大きな書店の「メディア論」の書棚を眺めてみると、「資本主義」「公共圏」「情報化」のような難しそうなことばがタイトルに使われた書物が目につく一方で、「アイドル」「ゲーム」「ポピュラー音楽」「ファッション」のような、一見すると「これが研究になるの」と思うようなことばをタイトルに使った書物も目立ちます。
 私自身、これまで、写真、映画、インターネットなどについて考えてきました(主に映像メディアを研究しています)が、自分の研究について説明すると、「そんな趣味的・娯楽的な研究が何の役に立つのか」と質問されることも少なくありません。私が依拠している社会学の一般的なイメージは、この社会が抱えているさまざまな問題、たとえば、社会的不平等、少子高齢化のような「真面目な問題」について調査し、その問題の成り立ちや解決法を明らかにする「世の中の役に立つ研究」というものでしょう。それは、もちろん間違いではありませんし、社会学のもっとも中心的な部分です。
 では、「趣味的・娯楽的なメディア文化」は、研究に値しないものでしょうか。私たちは、社会の真面目な問題に直面しているとともに、趣味的・娯楽的なメディア文化に取り囲まれた日常を生きています。したがって、社会学が「真面目な問題」しか扱わなければ、私たちが生きる社会の一面しか捉えていないことになります。だからこそ、メディア文化も社会学の対象として真面目に取り組まなければならないと考えます。メディア研究は、「趣味的・娯楽的」に見えても、実は奥が深い、やりがいのある研究テーマなのです(だから私は30年以上も続けています)。
 この説明でメディア文化の研究に興味を持った方は、ぜひ、「アイドル」「ゲーム」「ポピュラー音楽」「ファッション」など、ご自分の興味がある対象を扱ったメディア研究の書物を、書店や図書館で手に取っていただきたいと思います。おすすめは、様々な出版社から「新書」という判型で刊行されている書物です。新書は、真面目なものから趣味的・娯楽的なものまで、多様なテーマを300ページ前後でコンパクトにまとめているので手に取りやすいと思います。関西学院大学の難波功士先生がメディアやポピュラー・カルチャーに興味を持つ学生向けに作成された、「新書200選」(https://sidnanba.hatenablog.com/entry/2022/06/27/000000)のリストも参考にしてみてください。