【人文社会学類】正田ゼミ体験記(1)――草間彌生の芸術
2026/03/23
人文社会学類の正田ゼミでは、美術作品を見ることを通して、人間とは何かを考えています。芸術世界の真相(深層)を探究し、哲学・思想・宗教的な意味合いにまで考察を進めています。
佐々木里穂さんは卒業論文で草間彌生(1929-)を取り上げました。彼女の芸術は一体何を表わし、なぜ人々に訴えかけるのでしょうか。またその作品世界の異様さや非日常性にはどんな秘密があるのでしょうか。
草間彌生《大いなる巨大な南瓜》
佐々木さんはこれらの謎に注目し、草間芸術の核心に迫りました。現地に実際に足を運んで、松本市美術館の《大いなる巨大な南瓜》と香川県の直島の《南瓜》を比較しました。そして芸術作品を通して自己と世界の境界が消えること、水玉に身を任せることで、日常生活の孤立感や不安から離れて、自分という存在を意識しなくなること。こうした鑑賞体験の内実を明らかにしつつ、説得的な論を展開し、秀逸な論文を書き上げました。
佐々木さんのゼミ体験記を是非お読み下さい! (本学准教授・正田倫顕)
草間彌生《南瓜》
人文社会学類 佐々木 里穂
私は、もともと草間彌生に強く惹かれ、彼女の作品が地域にどのような影響を与えるのかに関心をもっていました。作品そのものの美しさだけでなく、芸術の本質に迫る視点に魅力を感じ、正田先生のゼミを選びました。
ゼミでは文献を読み、グループワークやディスカッションを重ねながら学びを深めました。印象派をテーマに各自が調査を行い、PowerPoint にまとめて発表したこともとても勉強になりました。発表を通して自分の考えを整理し、相手に伝わる形で構成する力を養うことができました。また、他のゼミ生との議論を通して、多様な価値観や視点に触れ、アートを多角的に捉える姿勢が身につきました。
ゼミの様子1
卒業論文では、草間彌生の代表作を取り上げ、出身地である松本市、そしてアートの島として知られる直島との関係を考えました。研究を進めていく中で、どのように論を展開していくべきか分からなくなったこともありましたが、先生との面談ややりとりを通して、自分の考えを一つずつ整理していくことができました。問いの立て方や視点の設定について助言をいただいたことで、研究の方向性が徐々に明確になっていきました。
具体的には、草間彌生作品における「水玉」というモチーフに着目し、その意味と役割について考察しました。水玉は単なる装飾ではなく、自己消滅や無限、宇宙との一体化といったテーマを象徴する存在であり、草間自身の内面的体験とも深く結びついています。画面や立体作品を覆い尽くす水玉は、空間そのものを変化させ、鑑賞者を作品世界へと包み込む働きをもっています。
直島に設置されている屋外作品《南瓜》と松本市美術館前に展示されている《大いなる巨大な南瓜》を比較し、同じ「水玉」を持つ作品であっても、置かれる環境によって受け取られ方や空間との関係性がどのように変化するのかを分析しました。
海と一体化する直島の南瓜と、都市空間の中で象徴的に存在する松本市の南瓜とでは、水玉が生み出す印象や意味の広がりに違いが見られます。水玉というモチーフが作家の思想を表すと同時に、空間や地域との関係の中で新たな意味を獲得していく過程に注目しました。
ゼミの様子2
また、文献だけでなく実際に現地に足を運ぶことの重要性を感じ、松本市や直島を訪れました。さらには学芸員課程の博物館実習でも、八戸市美術館や十和田市現代美術館を調査することができました。作品とその周辺環境を実際に見ることで、アートが地域の景観や雰囲気、訪れる人々の動きとどのように結びついているのかを体感することができました。
卒業論文執筆の最中には、不明な点が生じ、夜遅くに先生へ連絡をしてしまったこともありました。私としては切羽詰まっている状況でしたが、先生には丁寧にご対応いただき、疑問を解消することができました。その経験から、研究は一人で抱え込むのではなく、対話を通して深めていくものだと実感しました。
ゼミでの学びを通して、物事を一方向から見るのではなく、多方面から問いを立て、考え続ける姿勢が身についたと感じています。これからもアートの魅力について探究を続けていきたいと思います。
学位記授与式