尚絅学院大学

尚研|Show KEN

尚研Vol.6 子どもが健やかに育つ環境づくりを:総合人間科学系教育部門 准教授 峰 友紗

神奈川県出身。東京慈恵会医科大学(医学部看護学科)、国立公衆衛生院(現・国立保健医療科学院)を経て、法政大学大学院で修士号を取得。卒業後、慶應義塾大学で3年間教鞭をとる。この間、保健師としての実務経験も積みつつ、2013年より東邦大学大学院へ。博士号(医学)を取得後、母校・東京慈恵会医科大学で再び授業を受け持ち、2018年より尚絅学院大学講師として勤務。

研究テーマ

  1. 肥満を予測する体格変化とスクリーンメディアの使用に着目した幼児期からの肥満予防

今後取り組みたいテーマ,興味など

  1. 保育現場と公衆衛生の連携 —公衆衛生は、保育現場にいかに介入できるのか
  2. 幼児教育の可能性を疫学的視点でのアプローチ

主な学外活動

  1. 全国いきいき公衆衛生の会世話人
  2. 日本世代間交流学会監事、日本疫学会、日本禁煙学会所属
「もっと早く出会いたかった」公衆衛生の仕事

大学在籍中は、進路に迷いながら過ごしていた峰氏。看護学部に進学したものの、将来看護師として臨床で働くというイメージが持てずにいた。実習や勉強に追われ、大学生活を楽しむ余裕はなかなか持てず、「自分に勇気があれば、きっと早くに大学を辞めていた」と思うほどだった。転機は、母親に勧められた夏休みのアルバイト。児童館で子どもたちを見守る仕事だった。看護学部では、病気やケガに苦しむ方を医療機関の中でケアすることを中心に学んでいたが、児童館にいるのは外で元気に走り回る子どもたち。「こっちの道が、自分には向いている」と峰氏は直感した。「元気に見える子どもたちも、実はいろんな家庭環境で生活していることに気づきました。地域で生活する親子に興味を抱き、子どもが健やかに育つためには何ができるのか、看護職として出来ることは何か、を考えるようになったんです。そして大学4年の時、地域に密着した母子保健の仕事がしたいと保健師を志しました。大学卒業後は、保健師として働く勉強を続けながら、国立公衆衛生院(現・国立保健医療科学院)で恩師に出会い、保健師になってからは先輩や地域の方々から助けて頂きながら、多くの親子と関わり様々な経験を積みました。現場での経験や疑問を客観的な視点で考察してみたいと思い、保健師をしながら大学院に通い修士号を取得しました。」

気がつくと、保健師の仕事を天職と感じるようになっていた。もっと早く「保健師」ひいては「公衆衛生」の面白さに出会いたかった、とも思った。「基礎看護教育で公衆衛生の楽しさや、仕事の魅力を伝えたいと思い、3年間、大学で『公衆衛生看護』を教えました。そしてその後、博士号を取得するために大学を退職、大学院に入ったんです」

「過去に蓄積されたデータを、未来に活かす」

大学院博士課程で、妊娠中の母胎の健康が、その後の子どもの発育に与える影響を研究していた峰氏。当時、低出生体重児の割合が全国より高かった沖縄県で、女性の喫煙率に着目し、「妊娠中の母親の喫煙が乳児期の急激な体重増加に与える影響」をテーマに学位研究をスタートさせた。研究フィールドは沖縄県全域。毎月のように飛行機で通い、健診データを参照したり、離島の乳幼児健診に立ち会ったりと、沖縄県の協力を得ながら研究を進めていった。

「人間が成長していく過程を調査するものなので、すぐに明確な結果が出る研究ではないのですが、妊娠中の母親の喫煙が、出生児の低体重だけでなく、将来の肥満を予測する乳幼児期の急激な体重増加と関連があることがわかりました。当時胎児だった子どもが生まれ、乳幼児を経て、小学生になり、大人になっていく過程でどのように変化していくのか。日本には蓄積されたデータが沢山あります。これからも、蓄積されたデータを活用し、社会に還元していくことが必要です」

縁あって宮城へ、尚絅学院大学に在籍して約2年。現在は、宮城県川崎町の協力を得ながら、「肥満を予測する体格変化とスクリーンメディアの使用に着目した幼児期からの肥満予防」について研究中だ。特に宮城県は、幼児期の肥満率が全国平均よりかなり高い。5歳時点で、男女ともに、全国値の2倍を超えるのだ。峰氏は、子どものスクリーンメディア使用と身体活動量の関連性を調べ、幼児期からの効果的な肥満予防を検討したいと考えている。「保育施設で実施されている身体計測のデータを活用して、研究を進めているところです。沖縄の時もそうでしたが、せっかくある蓄積されたデータを活用して、予防や原因の解明につなげていくことができたらと考えています。宮城の子どもたちの未来のためにも、この研究を進めていきたいと思います」

自分の仕事の先には、常に子どもがいる

講師として学生に「子どもの保健」「子どもの健康と安全」の授業を行う上でも、自身の研究を進める上でも、尚絅学院大学の環境はありがたいと話す峰氏。大学附属の保育施設や、近隣の学校や保育施設などとの協力体制が整っていることが大きいという。「研究は、地域社会にいかに還元できるかが重要だと考えています。協力いただいて研究を進め、学生に知識や経験を伝え、自分の研究と学生の将来を通して地域社会に還元する。そもそも公衆衛生は、『地域の健康課題を社会全体で考える』分野です。学会では情熱ゆえに討論が終わらないこともあるんですよ。そんな情熱的な人たちがいる分野で働きたいと強く思って、私自身飛び込んできました。学生にも、公衆衛生の魅力、面白さを伝えると同時に、地域社会に貢献することの大切さを伝えたいと考えています」

保健師として地域社会で実務を積み、研究者として各地で研究を重ね、教育者として未来の人材を育てる峰氏が、心の真ん中に置いているものは。「どんな形であれ、自分の仕事の先に『常に親子がいる』と思っています。私は、女性と子どもが幸せになる社会を目指したい。女性と子どもを社会で守ることが、世界が良い方向に進む指針になると考えているからです。今の日本では、保育と公衆衛生が別のものとして扱われていますが、本来はかなり密に関わることが出来る分野。子どもの健康を考えるにあたって、保育に携わる方々の役割はとても大きいです。このことも、もっと発信していきたいと思っています。子どもが健やかに育つための環境づくりを、さらに進めていきたいですね」

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