尚絅学院大学

尚研|Show KEN

尚研Vol.5 子どもたちに向き合う先生を育てたい:総合人間科学系人文部門 准教授 中山 悟視

福島県出身。福島大学(教育学部中学校教員養成課程美術科)卒業後、同大学院で修士号(教育学)を取得。福島県内

「桜の聖母学院」にて図画工作専科教員・美術科教員として勤務。その後、尚絅学院大学准教授として勤務。教員として勤める傍ら、作家として数々の作品を制作し、フランス芸術家協会主催・第227回「LE SARON 2017 medailles de Bronze」銅賞など数々の受賞歴を持つ。

研究テーマ

  1. 造形教育図画工作教育における教員の指導スキル向上について
  2. リアリズム絵画における鉛筆描法の可能性について

今後取り組みたいテーマ,興味など

  1. STEAM教育における「ART」と「図工・美術教育」の関わりについて

主な学外活動

  1. 公益財団法人美育文化協会東北幼年美術の会委員
  2. 日本文教出版社中学校美術科教科書等編集協力者

14年間の実務経験を経て、“教員を育てる教員”へ

造形教育の教育者であり、美術作家でもある相馬氏。教育と美術どちらが主軸かを尋ねると、「もちろん、両方です。入り口は教員になることでしたけどね」との答えが返ってきた。教員への憧れは小学校低学年の頃から。子どもの気持ちを汲んでくれる担任の先生に接し、「学校の先生」になることを志した。高校2年で具体的に進路を考えた時、幼少期から絵を描くことが好きだったことから「先生になるなら美術の先生を目指そう」と決意。小学生から継続してきた剣道部と兼部という形で、受験に備え急遽美術部に入部し、初めて本格的なデッサンを学んだ。大学では中学校の美術教員になるための課程を履修し、さらに学びを深めるため大学院へ進学。教員採用試験を受けようと考えていた頃、「桜の聖母学院」から声をかけられ、小学校教員として勤めることとなった。「私は小学校の教員でありながら、一人で学校すべての子どもたちに図工を教える『図画工作専科』という立場でした。東京では一般的ですが、東北の小学校では珍しいかと思います。小学校では教えなければならない科目がたくさんあります。その中で、時間数の少ない「図画工作」に時間や労力をかけることは、とても大変なこと。現場からするととても指導が難しい教科なのだと実感しました」

小学校で7年間教えた後、桜の聖母中学・高等学校で美術科教員として勤めた。小学校から高校までの図工・美術教育に携わって感じたのは、「図工をしっかりと教えることのできる教員を育てたい」という思い。教員を育てるのは大学だ。大学で教員になるためには、まず論文発表や作品制作をし、多くの実績を上げなければならない。次のステップに進むために、寝る間を惜しんで論文執筆、作品制作に打ち込んだ。

「造形教育・図画工作教育における教員の指導スキル向上」

学会発表、多くの展覧会等で受賞し、2014年、尚絅学院大学に講師として採用されると、保育者・小学校教員を目指す学生を相手に、造形教育についての指導をスタート。相馬氏は、保・幼・小・中・高・大学と「ひとりの人間が体験する造形教育」の全課程に携わったことになった。実践的な造形教育を考える上で、非常に貴重な経験である。

相馬氏は、日本美術教育研究論集等に図工・美術教育に関する論文を発表しているが、研究した成果のほとんどを“教育現場に還元”している。具体的には、「造形教育・図画工作科教育における教員の指導スキル向上」のための、現場に向けた発信・サポートだ。1つ目の柱は、尚絅学院大学の学生が将来より良い保育・教育を行えるよう、正しい造形教育、図画工作科教育を行うこと。2つ目の柱は、研究会に講師として参加し、実際に学校教育の現場に立つ先生方に指導について助言をすること。時には、子どもたちの絵画コンクールの審査員として、良い指導方法や評価方法について発信することもある。「最近では、一般の方々に向けて講演する機会も多くなってきたので、子ともが描いた絵の見方についてお話しさせていただきます。教育現場ではない場所にいる大人の目を変えていくことも私の目標に繋がることだと考えています」

2018年度からは、企業の協力を得ながら事務局を立ち上げ、保育者・小中学校教員向けの研修会を主催。今年度は、相馬氏をセンター長とする 「尚絅学院大学造形センター」を設置した。日本の造形・図画工作科教育の第一線にいる教育者を客員研究員に迎え、教育現場のさらなるスキルアップを目指す。

子どもたちに真剣に向き合う先生を育てる

精力的な活動で、造形・図画工作科教育のスキル向上に貢献する相馬氏。自身の作品制作にかける時間も情熱も、以前より増しているという。「大学に申請している研究は、指導スキル向上についてではなく、『リアリズム絵画における鉛筆描法の可能性について』というテーマの方なんです。私が目指しているのは、目に見えないものまでも描き出すことです。モチーフが持つ、空気や温度、湿度、匂いや音など。そういった目に見えるもの以外のものを、色のない鉛筆だけで描き出す試みが、「ものがそこにあること」をよりリアルに表現すると考えています。私は教員養成出身のため、美大で専門的に絵画を学んできた訳じゃないんです。でも「美術教師として子どもたちの前に立つからには、自身が表現することをやめてはいけない」という思いから、教員に就いてからの19年間、どんなに忙しくても、絵に向かうことが辛く厳しくても、寝る間を惜しんで描き続けてきました。そうした日々の研鑽が、今こうして自分が「画家」としていられることへと繋がっているのだと思います。」

自分で作品をつくり続ける経験、そして造形・図画工作科教育の全課程に携わった経験を活かして、もっともっと実用的なスキルを提供していきたいと話す。その原動力の一端は、造形・図画工作科が持つ“見えない力”にあるようだ。「造形・図工は、情操教育と呼ばれています。完成された作品だけでは、その子の制作プロセスって見えませんよね。大人は作品だけで評価しがちですが、最も大切なのは制作している間に子どもたちが働かせた”見えない力”なんです。子どもたちが、今、何を感じ、何を考え、どこで悩んで、どう解決しようとしているのか、子どもの内面を捉えて、表したその子を認めることが造形・図工で最も大切なことだと考えています。教育現場に立つ先生方には、ぜひ子どもたちに真剣に向き合ってもらいたい。そんな思いで、私自身、尚絅学院大学の学生たちに向き合っています」