尚絅学院大学

国際交流エッセイ リレーエッセイ

【国際交流リレーエッセイ 第27回】一年の留学を終えて

2020/06/02

国際交流リレーエッセイ第27回目は子ども学科の伊藤伸さんです。伊藤さんは本学の協定校、アメリカワシントン州立オリンピックカレッジに1年間交換留学し、先日無事に帰国しました。

一年の留学を終えて

一年の留学を経て、様々なことを学んだ。
私が留学を決意した理由は一言でいえば、好奇心によるものだった。高校入学時にストリートダンスに出会い、精力的に活動していくうちに好奇心が一層強くなり、ストリートダンス発祥の地であるアメリカ、そして個人的に趣味の範囲で取り組んでいた英語、この二つを学びたいと留学を決意した。
また、生活を一変させることで、自分の悪いところ、苦手なところを見つめなおし、改善していくというのが留学の大きな目標の一つだった。
一年間の留学で様々なことを学んだが、ここではアメリカ教育の特徴、コミュニケーション、そして「学ぶ」の意味という三つについて述べていきたい。


1.アメリカ教育の特徴

私は最初の半年をIntensive Englishという集中英語コースに在籍し、残り半年を教育学系の専門授業を受講した。
どちらにも言えることは、コミュニケーションを重視した教育形態であることだ。教員は何かあるごとに対話のきっかけを受講生に提供する。また、授業のどのようなタイミングでも挙手をして質問をすることが可能であり、アメリカの学生は積極的に発言をしていたことが印象深い。
ただ、これはデメリットも存在する。限られた時間の中で教えられる絶対量が減ってしまうということだ。また、ただの感想を言い合うだけで学びが薄くなってしまうことにも繋がりかねない。 一方メリットとしては、自発的に活動へ参加しやすい、知識定着の促進も見込めると感じた。どちらが良い、悪いという話ではないが、こういった教育の方法も将来教員になったときに取り入れていきたい。

2.コミュニケーション

自分は幼少期から、自己主張というものに苦手意識を持っていた。何かをしようとするたびに、毎回頭の中で葛藤が起こり、行動に移せないことばかりだった。その結果、常に周りに合わせる癖が染みついてしまった。
一年間の留学では日本人も含め様々な人がいた。日本でいえば、一般的に「癖の強い」といわれるような人ばかりだった。そういった人たちと関わっていくにつれ、世界の広さというものを本当の意味で理解できた。
いままで自分が悩んでいた一般的や普通といった言葉は些細な力しか持たないということに気づいた。地域が違えば、常識も異なる。時代が違えば当たり前も異なる。こういったように、個人個人違うのが大前提であるのになぜ「当たり前」や「一般的」という小さいものに拘っていたのだろうか、と気づいたとたん一気に気が楽になった。小さなものにこだわらず、自分を表現し、相手の違いを受け入れるという自分の中の答えが見つかった。

3.「学ぶ」の意味

アメリカの生活は日本に比べ、緩やかに時間が流れていた。アルバイトをするわけでもなく、学校も日本に比べ授業数がかなり少ない一方で宿題は大量にあるというのが自分の生活であった。その分、一つの大学の課題や、自分が抱えている課題について日本にいた時以上に深く、長く考えることができた。
私は日本の大学3年間を振り返れば、いかに学びが浅かったかということに気づいた。当時は一生懸命学んでいるつもりではあったが、深く考えることもなく、ただ知らない用語、考えを覚えていくだけであった。留学を通して、得た知識を自分の価値観にまで落とし込んで初めて「学ぶ」ということができるのだと気付いた。そのような経験を通し、「学び」というものは、「考える×知識=学び」という形になると考えた。知識がなければ深く考えられない一方、いくら知識だけあっても、考えなければ身につかず、役には立たない。現状自分は知識という部分が圧倒的に不足しているため、自分に必要なものを見極め、着実に知識を付けていきたいという考えに至り、これが自分の生きる上での譲れない軸になりつつある。

まとめたことは自分の一年間で学んだことの一部分ではあるが、多く、そして深く様々なことを学ぶことができ、自分の留学はとても充実した一年だったと自信をもって言うことができる。

後輩に向けて

何かを学ぶということに苦手意識のある人や、考えることが嫌いな人は留学にあまり向いていないかもしれない。基本的に日本より制限が多く、コミュニケーションも満足に出来ない状態になるため、必然的に自分の時間というものが増える。そこで感じたことを自分なりに昇華できないのであれば、大金を費やしたのに薄く浅い1年を送ることになってしまう。英語学習という意味ではそれでもいいのかもしれないが(四六時中英語漬けになるため、ただ生活するだけでも一定の成長は見込める)、人間として学ぶということにフォーカスすると少しもったいないと思う。留学生活はとても素晴らしいものであるので、そこで自分がどのように過ごしていくかが、結果を大きく左右することになる。これから留学を考えている後輩たちには、機会を最大限に生かして充実した留学生活を送ってほしい。
また、留学以外の実生活の様々なところにも学びの種はいくらでも存在する。そのようなものを見落とさず、広い集め、学びに繋げていって欲しいと思う。
 

こども学科 伊藤 伸