尚絅学院大学

国際交流エッセイ リレーエッセイ

【国際交流リレーエッセイ 第11回】寒いロシアの温かさ

2019/01/11

国際交流リレーエッセイ第11回目は本学子ども学科准教授 土田定克先生です。土田先生は第3回ラフマニノフ国際コンクール第一位。国内のみならず、ロシア全域、クロアチア、ウクライナ、タイ、韓国等にて演奏をしています。
今回はロシアについて美しい写真と共にご紹介します。

ロシアの冬。そこでは、さらさら波打つ湖面も凍てついて、遊歩道ができあがります。
芯まで冷えこんだ銀世界では、多くの教会でロウソクがきらきら灯っています。


かつてモスクワには「40の40倍」も聖堂があったそうです。そのリズミカルな多彩な鐘の音は人々を祈祷に招き、チャイコフスキー、ムソルグスキー、ラフマニノフほか偉大なロシア音楽の源となりました。


ロシアの極みは寒さだけでなく芸術にあります。芸術は白黒一色の雪国を彩り、人生の意味を問い、宗教弾圧の前世紀には教会に代わって生きる力を人々に与えました。美を追求するひたむきな生き方は、ロシア人の熱心な教育にもよく表れています。


もともとスラヴ民族とは「(神を)讃える民」という意味です。雅語で「Народ-Богоносец」(神を奉る民)とも言います。「ありがとう」(Спасибо!)も「神に救われますように」という意味ですし、「ごめんなさい」(Простите!)も「(私の罪を)帳消しにして」という意味です。頂点にイエス・キリストの愛をいだく神中心の文化、それがロシア文化と言っても過言ではありません。かのチュッチェフの名句が示すとおりです。
 

知もてロシアは解しえず
並みの尺では測りえぬ
そはおのれの丈を持てばなり
ロシアはひたぶるに信ずるのみ


もうじき迎える降誕祭の後には、「洗礼祭の寒波」と呼ばれる最強の寒波が来ます。そのようにしてやがて迎える春の喜びは、ひときわ深いものがあるのです。
北国のロシアでは、今日も老若男女が氷点下の世界を生きています。静かに燃えるロウソクの火のように、心温かく祈りつつ――。

子ども学科准教授 土田 定克