【国際交流リレーエッセイ第75回】 韓国留学を終えて
2025/10/11
国際交流リレーエッセイ第75回目は、韓国の協定校での約半年の留学を終え帰国した小松 莉菜さん(人文社会学類4年)による報告エッセイをお届けします。
韓国留学を終えて
私は、今年2月末に日本を後にし、留学先である韓国へと出発しました。7月に帰国するまでのわずか4ヶ月間という短い滞在期間でしたが、韓国の培材大学での留学生活は、私の人生においてかけがえのない大切な時間になりました。 韓国に到着したばかりの頃、目の前に広がっていたのはこれまで慣れ親しんできた日本とは違う文化と言葉の世界でした。韓国語は日本である程度勉強してきたつもりでしたが、実際に韓国に来てみると、初めは韓国人の会話のスピードの速さや見慣れない単語が書かれた看板に戸惑いました。この地で本当に自分の韓国語は通じるのだろうかという不安が心をよぎったのを覚えています。しかし、ここで立ち止まってしまっては何も新しい経験にたどり着けないと思い、少しずつ留学生活へと足を踏み入れました。
そうして、この半年間という期間の中で最も強く実感したことは「積極性」の大切さでした。最初は緊張して自ら声を発することも躊躇っていましたが、クラスメイトに声をかけてみたり、一人でバスに乗り初めての店に入って食べ物を注文してみたりと沢山のことに挑戦してみました。そうすることで、「できないからやらない」という消極的な気持ちではなく、「できなくても伝えよう」という前向きな気持ちが芽生えていきました。日々、そんな小さな壁を乗り越えていく中で、自分の可能性を認められるようになり、次第に毎日が楽しく充実したものへと変わっていきました。そして、この積極性を心がけて生活することで、新たな友人との出会いや忘れられない思い出の数々へと繋がっていきました。
韓国と日本は距離的には近い国ですが、実際に生活してみると、似ているようで違うということを実感します。例えば、バスに乗る時のルールや公共の場でのマナー、飲食店でのサービスの多さ、自国の政治に対する国民の価値観、街の雰囲気など様々です。私が日本で当たり前だと思っていたことが韓国では当たり前ではないことも多く、戸惑うこともありました。しかし、そのひとつひとつの文化の違いが私にはとても新鮮で、ただ街をなんとなく歩いているだけでもたくさんの発見がありました。これらは現地で暮らすからこそ見えてくることです。日本にいては体験できない、自らの五感で異文化を感じ取れる喜びをこの留学生活で実感することができました。 学校生活では、韓国語の基礎を固めるために学部の授業を選択せずに、語学堂に通いました。語学堂の教室には、日本だけでなく、中国、ロシア、イギリスなど世界各国から集まった留学生の仲間たちがいました。国籍は違っても、「韓国が好き」という気持ちはみんな同じで、その共通点があったからこそ自然と仲良くなることができました。積極的に自分から話しかけるように心がけたことで、クラスでは日本人の友達だけでなく、様々な国の友達と仲良くなることができ、毎日が刺激に満ちた学校生活となりました。
一方で、意外だったのは韓国人と深く関わる機会は意外と少ないという現実です。まず語学堂のクラスメイトは全員外国人であり韓国人がいないこと。また、お店では注文だけで店員さんとの会話が終わってしまうことが多く、無人の精算機があるお店もよく見かけます。このように、日常生活の中で気軽に現地の韓国人と話すきっかけを見つけるのは難しいです。現地の韓国人と日常的に交流する機会は、自分が意識して作らなければなかなか得られないということを知りました。語学力を伸ばすには現地の人との交流が不可欠であると考えていた私は、日韓交流サークル「pikapika」に参加しました。週に一度、日本人留学生と韓国人の学生が集まって韓国の伝統的な遊びをしたり、外に出て体を動かすスポーツをしたり、活動は幅広く充実したものでした。最初は韓国人の学生たちの中で、自分の韓国語がどれだけ通じるか緊張していましたが、彼らはみんなとても親切で、分からないことは丁寧に教えてくれたり、私の拙い表現でも優しく受けとめてくれたりしました。その温かく和やかな雰囲気の中で自然と距離が縮まり、言葉の壁も徐々に気にならなくなっていきました。彼らとの交流を通して、実践的な韓国語や文化、そして韓国の皆さんの温かさにも直接触れることができました。
また、学校外でも積極的に様々な場所に足を運びました。留学前に行きたいと思っていたソウル中心を流れる大きな川の漢江(ハンガン)に行けたことや釜山(プサン)の市場で食べ歩きを楽しんだこと、語学堂の授業の一環である文化体験で訪れた全州(チョンジュ)では、それぞれが好きな色の韓国の伝統衣装を選んで着付けしてもらい、歴史のある街並みを散策しました。
どの遠出も素晴らしい思い出となりましたが、私は何よりも培材大学で友人達と過ごす日常が一番楽しかったです。キャンパス内の空が一望できる場所で一緒に眺めた朝焼けや、皆で教室に集まってデリバリーのご飯を囲みながら他愛もない会話で笑いあった夜のこと、そんな何気ない日常の風景が私にとって忘れられない特別な思い出です。
あのとき、「行ってみたい」という気持ちに背を向けず、留学に挑戦する道を選んで本当によかったと心から思います。半年間という時間は驚くほどあっという間で、一瞬のように過ぎ去りました。全てが楽しくうまくいったわけではなく、思い通りにいかず、悩んだことももちろんあります。それでも、4年間という限られた大学生活のなかで、こんなにもたくさんのことを感じ、学ぶことができたことが本当に幸せです。培材大学で過ごした時間、出会った大切な人々、交わした言葉は時が経っても色褪せず、私の中の大切な記憶にあり続けます。毎日が夢のような時間で、あまりにも充実していた留学生活でした。私はこれからも自分の気持ちに素直に、そして留学生活で培った積極性を胸に、新たな挑戦に恐れずに挑戦できる人間でありたいと思います。