尚絅学院大学

学校教育学類 お知らせ

【学校教育学類】国語科指導を系統的に学ぶ

2025/05/30

 小学校の教員免許を取得しようとした場合、様々な教科に関する授業を履修する必要があるので、どうしても大学内の講義で系統性をもたせるということは難しいです。ただ、その中でも最大限の学びができるように教員側も工夫をしています。ここでは、1~3年次までの国語科指導に関する授業の様子を紹介します。

1年次開講科目「国語」

 1年次開講科目「国語」は、授業科目名自体、学生が高校までに受けてきた「国語」と同じということもあり、教科書の読み取りなどを行うのかな? という学生が多いのですが、実はそのようなものではありません。

 この授業では、自分たちがこれまでに受けてきた国語科の中の活動をもう一度体験的に振り返っていく中で、その効果や教師の意図というものを確認し、国語科の様々な言語活動について基本的な理解を深めていきます。例えば、音読一つをとっても「斉読」「リレー読み」「一文読み」「役割読み」などの様々な方法があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。そのメリットとデメリットを知った上で、もう一度自分たちで音読をして、確かにそうだという実感的な理解につなげていきます。

 ある日の授業では、「説明的文章」について扱いました。国語科の中で読解する文章は大きく「文学的文章」と「説明的文章」に分けることができますが、世の中に多いのはどちらの文章でしょうか? 
 実は、文学的文章はほんの一握りで、世の中に存在する文章のほとんどは説明的文章です。そのことを確認した後、学生には大学内で説明的文章を探す旅に出てもらいました。結果、サークル紹介のポスターや教室の利用方法の掲示、消火器の注意書きなど、確かに意識してみれば説明的文章と呼べそうなものがたくさんあるということに気付いていました。

大学構内の説明文を探す

大学構内の説明文を探す

2年次開講科目「国語科教育法Ⅰ」

 2年次開講科目「国語科教育法Ⅰ」は、小学校教諭の免許状取得のための必修科目です。そのため、2年次の学生のほぼすべてが履修することになります。1年次「国語」は国語科で行う活動の基本的な理解でしたが、この授業では、より教員目線に立ち、国語科の授業をつくっていく上で必要なことを学びます。
 特にこの授業では、
 ・小学校国語科教育の目標をつかむ。
 ・小学校国語科の構造やその教材について捉える。
 ・国語科授業の基本的な在り方について知る。
 ・将来、教壇に立つ際に必要な国語科指導の基礎的な知識や役立つ指導法について理解する。
の4点を授業のねらいとしています。小学校教員として現場経験のある授業者が、実際に国語科の授業づくりの際に行っていた教材研究の態度と手法を示し、将来的に教壇に立つ学生に指導の具体的なイメージをもたせることを心掛けています。

 ある日の授業では、「学習指導案」を作成しました。これはその時間の授業をどのようなねらいで、どのような過程で行っていくかという、いわば授業の計画表のようなものです。初めて作る学生は四苦八苦ですが、学習指導案が作成できるということは、すなわち自分がやりたい授業の流れがきちんと言語化できているということに他なりません。学生には自分のPCを持ち込んで作成してもらいました。このように、自分のデバイスを持ち込んで授業を受けるということも、現在の大学の授業では当然のことになってきています。

指導案の作成、近くの人と検討

指導案の作成、近くの人と検討

3年次開講科目「国語科教育法Ⅲ」

 「国語科教育法Ⅰ」は小学校教諭の免許状取得のための必修科目ですが、中学校の国語科教諭免許状を取得希望する学生は、その後「国語科教育法Ⅱ~Ⅳ」を履修することになります。

 3年次開講科目「国語科教育法Ⅲ」では、受講している学生全員が必ず一人一回、45~50分の模擬授業を行い、その後すぐに受講者全体で検討会を行います。2年次までに学習指導案の作成法や国語科の各領域の授業づくりの注意点を学んできたことを生かし、それを実践に結び付けていくことをねらいとしています。
 教員養成課程のある大学は授業内で模擬授業を行わせますが、たいていは時間が不十分だったり、グループを組んで行ったりで済ませてしまいます。正規の時間、一人で授業を運営するという体験ができるのも、本学の少人数制の大きなメリットと言えます。

 どれだけ頭の中でシミュレーションを行ってみても、実際に授業を始めてみると、予定していたのとは異なった声掛けをしてしまったり、思いがけない答えが子ども(役の学生)から返ってきたりして、とても戸惑うものです。3年次後期には小学校の教育実習がありますが、その前に授業計画及び実際の授業運営の難しさを実感し、新たに学ぶ意欲を高めようとする学生が多くいます。

模擬授業の様子

模擬授業の様子

 学生を見ていると、入学したての1年次は高校までの「教わる側」という意識がまだまだ根強く残っていますが、2年次、3年次と進むにつれて、自分だったらどのような授業にしていこうかという「教える側」の意識をもち始めるのがよく分かります。
 その段階に合わせ、大学教員も系統的な授業づくりに努め、今後教壇に立っていくであろう学生たちに少しでも役立つよう心掛けていきたいと考えています。

(学校教育学類:大谷 航)