尚絅学院大学

学校教育学類 お知らせ

【学校教育学類】 観客席の運動部員たち ・・1校複数チームを考える・・(田幡)

2024/01/16

学校教育学類 田幡憲一

1 スポーツの冬
 冬もまたスポーツの季節である。スキー、スケート、そり、カーリングなど冬季のオリンピック・パラリンピックで開催される競技はもちろんのことであるが、夏季のオリンピック・パラリンピックで開催されるサッカーやラグビー、バスケットボールなどの競技も、ウィンタースポーツの範疇に入れることができる。ラグビーやサッカー、バスケットボールに係る日本選手権の決勝戦は、冬季に開催されてきたし、今も変わらない。
 スポーツTV観戦フリークの私は、冬季の休日も例によってTVの前に釘付けになっている。季節を問わず休日は身体を動かさず、高校、大学、社会人のスポーツTV観戦という、情けないことになっているのだ。

2 気になる、観客席の運動部員たち
 ウィンタースポーツに限らず高校生のスポーツ大会を見ていて、気になることがいくつかある。そのうちのひとつが、観客席の部員たちである。
 強豪校ともなると、観客席で応援する部員が100名を超えることもめずらしくない。アメリカンフットボールのような特別な例を除いてベンチ入りの人数が限られているため、ベンチの外即ち観客席で応援することになるのである。100名を超えるような部員を擁すれば、他校に行けば大会に出場する実力をもちながら、3年間の高校生活の中で1回も公式戦に出場しないで終わる部員も少なくないだろう。歌ったり、踊ったり、太鼓を叩いたりして所属チームを応援はしても、練習で磨きぬいた技を一度も公式戦で活用することなく卒業を迎えることは、私には異様に思える。
 中学校、高等学校の部活動は学習指導要領の総則に位置づけられた、学校の教育活動である。大会出場を学習の機会に準えて考えるならば、ある生徒には学習の機会が与えられ、ある生徒には与えられないということになる。競技を行う能力がある生徒であったとしてもである。

3 ハラスメントと観客席
 厚生労働省のハラスメント防止に関するウェブサイト(1)に記された、「職場におけるパワーハラスメント」の中に、「過小な要求」として「業務性の合理性がなく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと」が挙げられている。観客席での選手の応援が程度の低いことであるかどうかは別として、能力や経験とかけ離れた活動を命じられたり活動を与えられないこと、には違いない。
 合理性がない限り、観客席の部員たちはパワーハラスメントを受けていることになりそうである。

4 1校複数チーム制を考える
 問題の根源は、「試合に出られる1チームあたりの人数が限られていて、1校から1チームしか出られないこと」にある。このルールは各学校が制定するわけではないのだから、各学校における選手の選抜については、合理性があると言えるだろう。
 一方、1校から複数チームが参加できれば、多くの部員に公式戦参加の機会を提供する。競技を統括する組織にとって、1校1チームと定める合理性はどこまであるのだろうか?
 たくさんの高校が複数チームをつくるようであるならば、試合数が増えて大会運営に支障をきたす。選手の健康や学業にも影響を及ぼすことが予想される。1校1チームという考え方に一定の合理性はあるだろう。
 けれども、少子化に伴って高等学校も縮小気味であり、男女共学化の流れも相俟って、男女別で行われる運動部活動はチームをつくることが難しくなってきている。参加チームの減少傾向という現実に、複数の学校からなる連合チームという考え方が普及し始めている。日本高等学校野球連盟では2012年夏から連合チームによる参加を認めていて、昨夏の第105回全国高等学校野球選手権記念宮城大会には、2つの連合チーム(涌谷高・宮城水産・石巻北高、亘理高・迫桜高・岩ケ崎高)が出場している。また、今冬の第103回全国高等学校ラグビーフットボール大会では、福井県立若狭東高等学校と福井県立敦賀工業高等学校との連合チームが、福井県代表として東大阪市の花園ラグビー場第3グラウンドで東京第2代表の目黒高等学校と1回戦を戦っている。
 参加チームが減少し、1校1チームという原則が崩れてきている現在、1校複数チームを認めないことの合理性は薄れて来ていると言わざるを得ない。
 日本国憲法26条は、「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。」と謳っている。中学校、高等学校の部活動は学習指導要領に記載された、学校の教育活動なのである。1校から複数のチームが地方予選に出場することを検討してもよいのではないだろうか。

(1)厚生労働省ウェブサイト:職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント).https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html 2024年1月11日閲覧