尚絅学院大学

臨床心理相談室(ティクヴァ)からのお知らせ

ティクバ便りVol.2

2020/03/02

臨床心理相談室のスタッフが、リレー形式でエッセイをお届けします!



「からだとこころのつながりを意識して日常生活に生かしてみよう」
                      相談員 三好 敏之

 皆さんは「からだのこころのつながり」をどのように感じているでしょうか?

 日常生活の中でストレスがたまると次のようなからだの変化はありませんでしたか?

 私が専門にしている臨床動作法というからだから働きかける心理療法では、からだが不調になると心の不適応につながると考えています。それでは、こころの不適応とは一体どのようなことでしょうか?
 

 臨床動作法を考案した成瀬悟策(2009)は、「もともと動くようにできているからだを主体が思うように動かそうと努力する結果、からだが緊張したり動いたりする現象を動作という。」と説明しています。鶴(2015)によれば,「臨床動作法は,人の動作活動を個人のこころ活動と動作活動は一体的なものとして捉え,人が生きていくうえで生じる困難や不調を動作の側面から,より良い方向に変えていく援助をしていきます」とも説明されます。

 そのため鶴(2015)は,「動作課題を通して,自分のからだと向き合い,からだに働きかけることは,自分自身と向き合い,自分のこころに働きかけることになる。」とからだとこころの関連について説明しています。 

からだの不調

からだの不調

 臨床動作法を考案した成瀬悟策(2009)は、からだとこころの関係について「からだの不調を当人自らが処理・解消する努力の過程で、こころの不適応体験が消えていくための心理療法である。」と説明しています。

 こうした話をきいてみると、私たちの日常生活の中でもこころの不適応のサインが見られると、からだの不調が生活の中で実際におきていませんか?

 そんな時に、からだ動きのかたいところや動きにくいところを発見して動かしてみるとどうでしょうか?少し自分なりに動かしてみて、それによっておこるからだの動きをじっと待っていると、からだの動きにくいところやからだが硬くなっているところが弛む感じや弛む時にほっとしたりする感触を味わうことができると思います。

こころの不適応

こころの不適応

 

 臨床動作法では、動作法の体験(動作をしている実感:からだを動かしている感じ、動いている感じ)を充分にすることで、動作を伴う体験(自己弛緩とリラックス感、自分のからだの感じがわかる、自分が今ここに存在している感じ、現実に今、身体を動かし動いている感じ、自分自身が重力や大地のなかで今まさに存在している感じ)を感じることができると考えています。

 現代は、ストレス社会と言われますが、ストレスを感じ、少しでもこころの不適応を感じたら、動作の体験や動作に伴う体験をしてみませんか?そうすることがこころの不適応を減らしていくことにつながっていくと思います。

私たちがいま生きているこの時代は、些細な人間関係に悩んだり、生きていくために無理を重ねたり、そんなことばかりで、みなさんも、毎日の生活の中でストレスばかりが積み重なるような思いをしておられるのではないでしょうか?

 きっとからだが不調の声をあげていると思います。そんな時に自分自身のからだとじっくり向き合うことで、からだの声に耳を傾けてみませんか?

 なんらかの理由で自分自身のからだの硬くなっているところや動きにくいところに視点をあてて、そのところを自分なりに動かしてみたり、動きを待っていくことをしながら動作の体験や動作に伴う体験を感じることが大切だと思います。そうすれば自然とこころの不適応が減ってくると考えられます。

今回は臨床動作法を通して、ストレスのかかる現代社会においてからだとこころのつながりを考えてみました。私たちの日常生活でからだとこころのつながりを意識しながら、ストレスをうまく発散しながら、お互い楽しんで生きていきましょう。

  【参考文献】

成瀬悟策(2009):からだとこころ 身体性の臨床心理 誠信書房

鶴 光代(2015)臨床動作法(動作療法)vol6 シナリオ集 株式会社医学映像教育センター.