尚絅学院大学

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映画『波伝谷に生きる人びと』上映会を実施しました

2016/06/09


6月4日(土)に総合人間科学研究所主催で、『波伝谷に生きる人びと』の上映会を実施しました。当日は本学学生を中心に、教職員、地域の皆様、約120名の方々にお越しいただきました。上映後、我妻和樹監督と本学教員とのトークも行いました。我妻監督のお話を直接伺うことができて充実の時間となりました。

『波伝谷に生きる人びと』とは

 『波伝谷に生きる人びと』は、宮城県南三陸町の漁業集落である波伝谷集落の住民たちの生活を、監督自らが当地に通いながら長い時間をかけて撮影したドキュメンタリー映画です。
 本作品には、波伝谷のさまざまな世代の人びとが、少子高齢化という現実の中で、日常的な人間関係や集落の伝統文化を営みながら生きていく様子が活き活きと捉えられています。また、震災で甚大な被害を受けた波伝谷集落の、震災前の様子の貴重な記録にもなっています。
 作品を見ると、波伝谷集落の方々が心を開いて我妻監督の構えるキャメラの前に立っていることがわかります。監督のお話の中では、民俗学的関心をもとにして、地域の人びとの生活や文化を現場に入り込んで撮影する意図について語っていただきました。都市部で生活する若い学生にとっては、地域社会で営まれる伝統文化は新鮮に映った部分もあったようで、そうした文化に関する質問も寄せられました。

「記録」と「創作」を行き来する映像

 また、地域の文化を文字ではなく映像で記録するねらいについても語っていただきました。「ドキュメンタリー映画」というと「客観的記録」という見方がされがちですが、いかなる表現も主観的なものであり、その意味では本作も「創作」でもある、という監督のことばが印象的でした。
 また、本作と震災との関係について、完成に向けて編集作業を進めていたときに発生した東日本大震災によって本作は当初の予定と違ったものになったのか、という質問が会場からありました。本作は、その出発点において「震災」や「被災地域」をテーマとしていないが、震災が発生したことによって新たな視点が加わり今の形で完成した、という監督の言葉はこの作品の存在そのものを表現しているように思います。

我妻監督と波伝谷の今後

 「波伝谷の魅力とは何か」という質問に対する監督の答えは、本作のタイトルそのものである「波伝谷に生きる人びと」だったと思います。波伝谷とそこに生きる人びととの関わりを保ちながら、今後も様々な映画を作り続けたいと語られた監督の次回作に対する期待も高まりました。その際、このようなかたちで再び上映の場を設けられたらと考えております。  
 最後に、今回の上映会運営にご協力いただいた、事務職員、学生ボランティアの方々、そして会場で本作を鑑賞されたみなさんと我妻和樹監督に感謝申し上げます。ありがとうございました。

(文責:菊池 哲彦)