尚絅学院大学

人間心理学科 お知らせ

カウンセリングにおける「ことば」―相手を理解すること [人間心理 川端]

2017/10/05

 みなさんは,「カウンセリング」と聞くと,どんなイメージを持たれますか?

 多くの方は,面接室の中で,クライエントとカウンセラーが話し合うイメージを持たれるのではないでしょうか。もしかしたら,箱庭を作ったり,絵を描いたりするような場面を想像された方もいるかもしれません。カウンセリングには,本当にいろいろな技法があって,対話をメインにしたもの,絵を描いたり何かを作ったりするようなもの,体を動かしていくものなど,それこそ数えきれないほどの種類があります。

 しかし,どのような技法であっても,ごく特殊な例(例えば,聴覚に障害を持った方を対象とした場合など)を除いては,何らかの形で言語を用いないものはありません。そういう意味では,「ことば」こそがカウンセリングの基本であるといえるかもしれません。

 考えてみると,ことばというのはとても不思議なもので,例えば,「好き」という単語ひとつをとっても,相手との関係や,話の文脈,あるいはイントネーションやアクセント,声の調子などで,いろいろ違った意味を持ってきます。極端な時は,「好き」ということばが「嫌い」という正反対の意味を持つことさえあります。また,「大きい」,「茶色(い)」,「犬」などとの個々の単語は,全て一般的で抽象的な概念であって,今,自分の目の前にいる具体的な対象(例えば,犬)を表しているわけではありません。そうした一般的で抽象的な概念を組み合わせて,「大きい茶色い犬」ということばを作り,それによって,今,自分が見ているものを誰かに伝えようとするわけです。

 面接の中で,クライエントが,「今日は調子がいいです。」と語ったとしても,それはカウンセラーが思う「調子がいい。」と同じとは限りません。もしかしたら,「不調が続く毎日の中ではマシな方だ。」という意味かもしれませんし,本当は調子が悪いが,カウンセラーに気を遣って「調子がいい。」と言っているのかもしれません。あるいは,カウンセラーは「体に疲れなどが。」という意味で理解しているのに対して,クライエントは,「気分がうきうきしている。」という意味で「調子が良い。」と言っているかもしれません。

 カウンセラーは常に,自分の意識していない思い込みや偏見に用心して,クライエントのことばの向こう側にあるものを理解しようと努力することが必要です。簡単に「分かった」と思わないことが,実は本当によくクライエントを理解するために大切なことです。これは本当に難しいことで,僕などは,何年も専門家として仕事をしていますが,「あー,自分は本当にカウンセリングが下手だな。」とガッカリすることばかりです。それでも,またすぐに,「でも,もうちょっと上手になるように頑張ってみるかな。」と思うのですが。

文責: 人間心理学科 准教授 川端壮康

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