尚絅学院大学

人間心理学科 お知らせ

「こころのケア」ってなんだろう?[人間心理 内田]

2017/07/07

私は「こころのケア」という言葉があまり好きではありません。
臨床心理学を専門としている人が何を言うのだろう?と感じる人もいるかもしれませんが、この言葉が現在の日本において一人歩きしているような気がするのです。

兵庫県「こころのケア」センターの加藤寛先生の著書「こころのケア」からの言葉を借りますと、
心理とか精神とかいう言葉ではなく「こころ」という平易だけれど含蓄のある大和言葉に、「ケア」というゲルマン由来の外来語がくっつくとなんとなく情緒に訴える意味が与えられる
とのことです。さらに、
~こころを痛めた人たちに親身に接する、心のこもった配慮をするという意味で理解されているのでは~
と綴られています。

災害が起きたときに決まって「こころのケア」チームが派遣されます。
また、仙台市の中学校で自殺が起きた際にも
スクールカウンセラーを増員し、在校生の心のケアにあたること・・・~
と報道されていました。
何か問題が起きた時の免罪符のような、とりあえず「こころのケア」と言っておけば大丈夫、といった安易な意図で使われてはいないでしょうか。

では実際、こころの問題に対する介入、治療はどんなことがなされているのか、ということですが、患者さん(またはクライエントさん)からはよくこんな訴えを聞きます。
「精神科に行ったのに全然話を聞いてもらえなかった」
「カウンセリングに行ったのに何もアドバイスがもらえなかった」

現実的に、精神科はしなくて済む心理的介入はしませんし(話をまったく聞かないという意味ではありません)、カウンセリングはアドバイスをして相手を教え導くものでもありません。それがいわゆる「こころのケア」の実情です。
ただ、我々専門家からすればそれは常識ですが、一般の人からすればそうではないように見受けられます。

一頃に比べれば、うつ病やパニック症の特集がテレビで報道されるようになり、こころの病気そのもの、もしくはこころの病気の患者さんに対する理解は少しずつ得られるようになってきているような気がします。
ただ、こころの問題に対する介入(治療)についての理解はまだそんなに浸透していないのかなとも思われます。
当然、何をしてくれるところなのか分からないところに足が進むわけがありません。
専門家ができることことと、一般の人がケアに望むことの乖離を埋めていくことが、
今後必要なことなのではないでしょうか。

文責:人間心理学科 准教授 内田知宏

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