尚絅学院大学

人間心理学科 お知らせ

「夢」を生きる [人間心理 三好]

2017/01/17

 今回は「夢」について話します。朝方に私たちは夢を見ます。夢はレム睡眠中にみられ、一般にレム睡眠の回数だけ(一晩に4~5回)夢をみるとされています。視覚的なものだけではなく、聴覚、触覚、嗅覚、味覚といった五感に対応した夢をみることがあります。夢の内容は現実の世界では実現不可能なことや、本人の願望に近い内容であることも少なくありません。心理学的立場からは、現実に達成できなかった衝動などを夢という疑似的な行為で満足させたり、性欲や破壊欲などの本能欲動が開放されるという仮説があります。

 人間は今生きている時間の中で意識しているのが1割、あとは9割近くが無意識で生きています。無意識を知ることはユングは、自己を成長する、個性化と言っています。その自分の無意識を知ることができるのが「夢」です。例えば、夢で嫌いな人が出てきて、困った場面を見ます。ほとんどの方がこの夢を見ると、「やっぱりあの人は嫌いな人だったんだ。」と夢のサインを読み取ってしまうでしょう。しかし、夢そのものが自分なので、この夢では自分でも嫌いな人と同じのような性格で自分でもそのことが嫌だったりします。つまり、自分のも嫌いな人の嫌な面を持っている影(シャドウ)のテーマを夢は伝えていることが多いです。夢の解釈は単純なものではないのです。夢の解釈でフロイトもいます。フロイトは、夢に表れるものは、ことごとく「性的なもの」に関連づけたことが印象的です。例えば、傘や杖、ペン、鉛筆といった「棒」状のものは全て男性器の象徴。箱や靴など、「容器」状のものは全て女性器として解釈していたんです。ユングの場合は、単に性的なものに帰するのではなく、その夢をより多角的な角度から分析するよう試みました。夢に現れた物は、本人とどんな関わりがあるのか?本人の過去と何か関連性があるのかないのか?本人以外のものとの関係は?世間ではどんな用途に使われているものなのか…?

 こうして考えてみると、一つの夢から色んなことが連想されますよね。ユングが行ったこのような夢分析は、「拡充法」とも呼ばれています。ユング派では、相談者との対話を通じて、夢に現れた物や人、出来事の意味を考えていく。それが、ユングの「夢分析」のスタイルでした。例えば、よく似たテーマの夢を見ます。最初はなんだかよく分からない支離滅裂な内容で、ただただ、「怖い」とか「不安だ」とかいった感情の記憶だけが残るような夢だったのが、徐々にしっかりとしたストーリーができていくんです。例えば、真っ暗闇を「怖いよ~」と思いながら歩いていただけだったのが、その次には猛獣と闘う内容になり、やがてその場所(どこだかハッキリわからない)から立ち去っていく…といった具合。これは、自分の中にある“恐れ”の感情や“迷い”を克服して、自立していくテーマとも解釈できるものです。夢分析を使った心理療法では、前述したような、夢の「テーマ」が少しずつ進行していく様子を見守ることが大切だとユングは言います。例えば、思春期の頃のユングのように「女性とうまく付き合えない」という悩みを抱えた男性の場合。「ステージの上で歌う華やかな女性を遠くから観ている」「赤ちゃんを抱いた優しそうな女性を遠くから眺めている」…といったエピソードが夢に表れるなら、それは女性を理想化し過ぎている状態。赤ちゃんのように女性に優しくして欲しいという願望がありながら、女性を必要以上に理想化しているためになかなかうまく近づけないと解釈されます。最後に夢の解釈の基本原則の六つを述べておきます。第1に、夢の大筋をつかむ。第2に、その大筋が何らかの精神的な緊張状態や葛藤を示しているかどうかを調べる。第3に、すべての人物像を自分の分身としてみる。また、周囲に示されている状況を自分の心象風景としてみる。第4に、夢の中のいくつかの「もの」に生きてみる。第5に、特定の主題分析を行う。つまり、現在の心の葛藤、気になることとの関連でみる。第6に、夢をシリーズとして見る。

 ぜひこの機会に自分の夢を夢日記として朝起きたら書き、自分の知らない部分の発見をしながらより個性化して生きていきませんか?

文責: 人間心理学科 教授 三好敏之

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