尚絅学院大学

人間心理学科 お知らせ

コラム:心と体と動く会 [人間心理学科 目黒]

2016/03/01

 NHKのスーパープレゼンテーションという番組でアメリカの社会心理学者エイミー・カディ(Amy Cuddy)女史が、一般にボディランゲージと呼ばれている非言語行動(nonverbals)について興味深い話をされていた。
 
 非言語行動もまたコミュニケーションであり、他者の非言語行動が自分に何を伝えているのか、自分の非言語行動が他者にどのような印象を与えているのか、非言語行動が人々の判断にどのような影響をもたらすのか、様々に研究されている。
 
 しかし女史は、他者の非言語行動が自分に、また逆に自分の非言語行動が他者に影響をもたらすことだけでなく、実は自分の非言語行動が自分自身に対しても影響を及ぼしていることを指摘する。自分で自分のことをどう思い、どう感じるか、自分の考え、感情、そして生理もまた自分の非言語行動に大きく依存しているというのである。
 
 この非言語行動と心の関係について、女史は二つのホルモンによって実証科学的に説明している。支配性のホルモン(dominance hormone)であるテストステロン(testosterone)と、ストレスのホルモン(stress hormone)であるコルチゾール(cortisol)である。人は、力を感じるとき、自分の体を大きく広げ、手足を伸ばす非言語的な表現をする。このような力溢れるポーズは、テストステロンを増加させ、コルチゾールを減少させる。逆に無力を感じるとき、自分の体を小さく縮こませ、背中を丸める非言語的な表現をする。このような無力のポーズは、テストステロンを減少させ、コルチゾールを増加させる。確かに、力を感じたり、無力を感じたりするときの心が体に変化を及ぼすのは分かる。しかし女史が強調するのは、逆に体もまた心に変化を及ぼすということである。つまり、無力を感じるようなときでも、自信がないようなときでも、落ち着かないようなときでも、そして落ち込むようなときでも、力溢れるポーズをとれば、テストステロンが増加し、コルチゾールが減少し、ストレスが弱まるということである。そして驚くことは、このようなポーズをわずか2分間しただけで、これらのホルモンが増減するということである。2分間のポーズがホルモンの変化をもたらすのである。
 
 そして女史は、このようなポーズが現実にも応用できるとする。例えば、面接や面談に臨む際、テストステロンを上げ、コルチゾールを下げるポーズをとれば、もちろん面接の最中ではなく、その前にとるのであるが、ストレスを弱め、自分らしさを出すことにつながると。小さな変化であるかもしれないが、その積み重ねが大事と。
 
 このようにして、女史は「体が心を変え、心が行動を変え、行動が結果を変える」(Our bodies change our minds, and our minds change our behavior, and our behavior changes our outcomes)と話されていた。
 
 心と体の関係は、やはり双方向なのだろう。自分の体については自然に任せるきらいがあったが、歳を重ねるごとにそう言ってもいられない状態になる。医者からは運動処方なるもの、栄養指導も受けるようになる。運動効果は、続けると3日目までは上昇し、休むと漸減し3日目には切れる。週3日以上の頻度を目指し、連続して3日は休まない。1回30分以上、軽く汗をかく程度で、有酸素運動と無酸素運動を組み合わせる……。1日の摂取カロリーは、野菜は……、話を聞くだけでもストレスのコルチゾールが増加する。
 


 昨年の夏頃から授業終了後に大学のグランドで少し体を動かすようになった。普段、体を動かすことがないから、速めに歩くだけでも息が切れる。体が心に、あと何分と言い聞かせているようである。歩きながらいろいろと考えることができる。考えると時間を忘れる。心が体の辛さを忘れさせているようである。三日坊主にならないように、一人でも続けられるように、せめて名前だけでも動く会とつけて、週3日を目指して続けた。秋になり、授業終了後、グランドは暗く、歩くことができなくなった。冬は雪で歩けない。


 2月になり雪も溶けた。そろそろ動く会を再開できそうであるが、もう少し暖かくなるまで待った方がよさそうである。運動処方でも、天候の悪い時や体調の悪い時は運動を控えるようにとある。長い休みで心と体の葛藤があるようである。いや、心と心の葛藤か。カディ女史が言うように、体を動かそう。
 
文責:人間心理学科教授 目黒恒夫 専門:教育哲学・教育史

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