尚絅学院大学

環境構想学科 お知らせ

【シリーズ】環境構想学科教員エッセイ「グリーントーク」第5回鳥羽妙

2016/08/18

森林水文学から森林生態学まで

私の専門分野は「森林水文学」です。天文学や人文学は聞きなれている人も多いと思いますが、水文学を知っている人は極端に少なく、「すいもんがく」と読める人も少ないです。水文学は水にまつわるありとあらゆる事象を取り扱います。歴史にあたるような水の成り立ちから、地球上での動き、変化、収支などなど。私はその広い分野の中で、森林を中心とした水文学を研究領域としており、森に降った雨がどこへどう行くのか?がテーマです。森が受け止めた雨が蒸発して大気に戻っていく、または木をつたって地面に到達するなどの流れを追うので、見るものは物理現象です。雨を受け止める森がどういった状態なのか、木の種類や大きさ、密度など様々な条件を想定し、観測方法を工夫したり、現象を予想したり仮説を立てたりします。そこから現象を再現または予測するためのモデルを作ります。あれやこれや考え、当たったり外れたり、これらすべてが研究であり、面白いところです。さらに面白いのが、フィールドにいるといろいろな現象や生きものに遭遇することです。最近は、この出会った生きものにかかわる時間が多くなっているので、そのことも少し書きましょう。

秋の実り

秋の実り

大学の森(尚絅の森)で観測をしていると、様々な生きものの「気配」を感じます。ネズミがかじったクルミが落ちていたり、カモシカが食べてちぎれたアオキ の葉、ヤマグワやケンポナシの種がいっぱい入ったフンが落ちていたり、イノシシが掘り返した跡があったり。その気配でも十分なのですが、姿を捉えるために赤外線センサーが生きものに反応し写真が取れるカメラを設置しました。結果、実に様々な生きものが、昼夜問わず活動していることがわかりました。道のない森の中はもちろん、人が利用する遊歩道を、カモシカやイノシシ、ウサギやタヌキが歩いています。人が歩きやすい所は動物だって歩きやすいのでしょう。

キツネだって遊歩道を歩きます

キツネだって遊歩道を歩きます

カ メラはフラッシュがたかれるものとそうでないものがあります。フラッシュは鮮明に映る分、相手を警戒させる恐れがあります。警戒心の強いキツネも最初のう ちは写らなかったのですが、半年もしないうちに映るようになりました。光ることが危ない事ではないと学習したのでしょうか。カモシカはマーキングのため、カメラに眼下線をこすりつけてきます。何頭かいるカモシカがすべて行う行動ではなく、カメラに対してこれをするのは1頭だけです。何故かは不明ですが。ちなみにカモシカは「シカ」ではなく「ウシ」の仲間です。鼻先を見るとウシの仲間だとわかりますよね。

カモシカの鼻先

カモシカの鼻先

現在、尚絅の森のあちらこちらにカメラを仕掛けていますが、 大型では、ツキノワグマやカモシカ、イノシシ、小型では、タヌキ、キツネ、ハクビシン、アナグマ、テン、イタチ、ノウサギ、二ホンリスなどなど、ネズミやヘビもいま すし、鳥類もたくさんいます。そして厄介なことに今年はアライグマも記録されました。まだ尚絅の森で二ホンシカの記録はないですが、近隣ではシカやイノシシ、アライグマは増加傾向にあり様々な問題が起きています。これらの動物の数や行動が今後どのように変化していくのか、また、何か対策をたてなくてはいけなくなったときのためにも継続した観察をしていこうと思います。

ハクビシンの親子

ハクビシンの親子