人間心理学科 お知らせ

教育は「読む」「書く」「話す」に尽きます![人間心理学科 太田健児]

2015/09/30

 大学生の「学び」がこれほど議論されたことはこれまでなかったでしょう。PBL、双方向性型授業、アクティブラーニングなど、これまで高校までの授業の工夫として議論され、実践されてきたものが、今や大学教育のレベルでも導入せざるをえない状況なのです。自分が大学生の時は、教授の背中を見て自学自習のようなかたちで勉強していた記憶があります。大学教育も大きな転換期を迎えているといえましょう。
 
 しかし、理系・文系であれ、いかなる学問分野であれ、基本は昔も今も未来も変わらないと思います。それは「読む」「書く」「話す」ことに学びは尽きるからです。紙媒体であれ、電子媒体であれ、SNS、メールやLINEであれ、それらを「読む」「書く」ことには変わりありません。そして今や「人間関係しかない社会」「コミュニケーションありきの社会」といわれており、「話す」ことの重要性が、実は一番問われているのが現在だと思われます。単に漫然と話すのではなく、相手が分かるように、順序立てて、筋道立てて、具体例を持ち出し、言葉を選び話す必要があるわけです。LINEのスタンプだけでドンピシャとメッセージを的確に伝えることのできる人などもう名人級と言わざるをえません。
 
 ですから「読む」「書く」「話す」の対象というか媒介物は違えど、「読む」「書く」「話す」という営為は未来永劫続きます。





 さて、人間学系の授業科目に「原書・文献講読」という科目があります。哲学・倫理学、神学・宗教学、教育学、社会思想の分野の5人の教員が、それぞれの専門領域の必読文献・重要文献を原語か日本語訳で「熟読」する科目です。私の担当クラスでは、去年、アントニオ・ネグリ『野生のアノマリー』、E.デュルケーム『自殺論』、今年度は継続してE.デュルケーム『自殺論』を読んでいます。
 
 英語や外国語の力をつけることはもちろんですが、テキストを一字一句おろそかにせず、厳密に読解していく作業は、全ての学問分野へと通じていく基礎となります。昨今の教育は、ややもすると分かりやすさを追求するあまり、口当たりの良い、耳に心地よい平易な解説に終始する傾向があります。しかし、それに慣れてしまった私たちは、難しいもの、分からないものを「理屈抜き」に避けてしまう傾向にあります。これでは自分の限界をいつまでも超えることはできません。ですから、価値ある文献に腰を据えてじっくり取り組むというある種の「身体技法」を身につけることが大事なのです。
 
 また、「読む」「書く」「話す」は「社会性」そのものとも言えるでしょう。「人間関係しかない社会」「コミュニケーションありきの社会」と前述しましたが、心理学でもよく出てくるこの「社会性」は、sociability という単語だけでなく、social  interaction と表現される場合が多いはずです。この interaction の土台は「読む」「書く」「話す」であることは明らかでしょう。
 
 「読む」「書く」「話す」を4年間継続して学ぶこと、これは教育の出発点でもあり、終着点でもあるといえるでしょう。


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