問題意識を自分の研究につなげていく
水田:心理学専攻に入ってくる学生は、哲学や社会学、教育学、あるいはキリスト教学など、心理学専だけに特化することなく幅広く学んできています。心理学をさらに高度に学ぶには、こうした幅広く学んできたことがとても大きな力になります。ものの見方、捉え方に影響するからです。
ところで、心理学専攻になぜ進学しようと思ったのか、皆さんに聞いてみたいな。まずは、小林君の動機は何でしたか。
小林:学部で学んでいた時代には哲学を中心にカリキュラムを組み、心理学は二の次でした。卒業論文もまた哲学に関してのものでしたが、この時、とても考えさせられました。というのも、研究しようと選んだ哲学者にもよるのでしょうが、考え方が自分の生活とはかけ離れているように思い、もっと生活に立脚した現実味のある考え方を追求したいと思いました。それなら、心理学の方がふさわしいということで、心理学専攻に進学しました。
菊地:私は学部の心理学科で学び、卒業研究に取り組みました。その際、あまりに自分の研究内容が稚拙で、卒業論文を書いている途中で中途半端な自分が許せませんでした。このまま就職してはダメな自分のままなので、もっときちんと学びたいと心理学専攻に進みました。就職活動に向けて、もっと有利に心理学を活かせるように習得したいという気持ちもあります。
水田:自分自身の学ぶ動機を見つめることも、今後の学習や研究の意欲に関わることですね。
心理学専攻では、ゼミ形式を通して広く、深く学び、その成果を修士論文に結実させます。人間の心理を理解する「認知心理学」や「行動心理学」を基本に、その応用となる「社会心理学」「臨床心理学」「犯罪心理学」などを学べるので、自分の問題意識に合わせて研究分野を選ぶことができます。逆から言えば、自分の問題意識をどのように研究につなげていくかが重要です。
データ収集・分析を実証科学としてマスターする
水田:心理学を研究する中で、最も大事にしたいのはデータの扱い方です。何を収集し、どのように分析するか、実証科学のやり方をしっかりマスターしないと研究として成立しません。
石木田:私たちが取り組む大切な仕事として、地域調査などのフィールドワークがあります。仙台市民を対象に防災意識のアンケート調査をしたのですが、どういう人々をサンプリングして、どういうアンケート項目を設定するか、また調査をどのように行うか、など実際に取り組んでみました。
水田:どのようにアンケート調査を行うかによって、結論が変わる可能性もありますから、いろいろと検討や工夫することが求められます。それで実践を通して学んでほしいと、データ収集を院生の仕事にしています。
石木田:以前は先輩が居られて、何かとアドバイスして下さいました。今度は私たちが後輩たちに教える番なので、しっかりしないとダメだなと思ってます。
互いに論議することが、多角的な見方のきっかけに
水田:分析するまでは科学的根拠などに基づきますが、それを解釈する段階で研究者の個性や視点によって違いが出ます。例えば、私自身は社会的な見方に重点をおきますが、例えば個人の行動心理を重視する研究者もおられます。ですから、着目した問題点が同じでも、論旨が変わったりするのです。データに基づいてどう考えていくのか、が大きく問われますね。
小林:日々、学ぶ中で少しづつながら、心理学的なものの見方、考え方が身についてきたように思います。人それぞれ解釈や考察する仕方が違っているのも理解できてきましたし、自分自身は社会的要因を重視するタイプかなと思ってます。
石木田:心理学を学ぶ前に、奇声を発する変な行動の子どもを見かけたことがあります。当初は頭がおかしい子どもと思ったものです。でも、心理学を学んで人間の行動に対する見方を変えるようになったら、奇声を発することも子どもの遊びの一つと認識できました。それだけに、一方的な決めつけをしないで、さまざまな角度から検討したり、見方を変えたりして、客観的な認識にたどりつくことが不可欠だと考えるようになりました。
菊地:ゼミ形式なので院生が意見を言い合うことが多く、いろいろな見方、考え方があるのだと、とても刺激になります。また、研究そのものもそれぞれ違う分野に取り組んでいるので、参考になります。だから、独断的に考えたことも、他の院生の方々との交流で客観視するきっかけをもらったりしています。
水田:指導を受ける先生の研究テーマに合わせて、自分の研究を方向づけることはないのです。ちなみに、院生は現在、5名ですが、教員はそれよりも多いので、マンツーマンの指導を受けることも可能ですし、丁寧にフォローしていただける環境にあります。
実際、関心のあるものが院生それぞれ違います。石木田さんは犯罪心理学に取り組もうとしてますし、菊地君は「“普通”とは何を意味するか」を模索していますよね。その二人が互いに話し合うことで、偏りになることもなく、多角的に考えるきっかけになります。場合によっては、ある種の矯正力のようなものが働くこともあるわけです。
のびやかに思考し、自由に研究する
水田:自分が興味を持った問題について、どう課題を抽出し、探求していくかを検討して、研究テーマとして設定すればいいので、自由に研究することが可能なのです。その中で研究する楽しさ、面白さにふれていくものです。
菊地:卒論でできなかった研究の達成感を、味わってみたいと思っています。ぜひ、結論を出したいですね。今は辛いですが、きっと面白さがあるのでしょう。
小林:心理学に深く関わっていくうちに、自分の考え方が変わっていくのが興味深いです。学部時代には哲学的に考察しようとするあまり、自分の考え方がとても異質なものに思えました。今は心理学的なものの捉え方をすることで、心理学そのものに新しい考え方を生み出すことができると考えるようになっています。心理学はものを考えるツールであり、ものを考えることそのものではないと気づきましたからね。

