白と緑のキャンパスで未来を語ろう
東日本大震災からの復興をめざして
学長 佐々木 公明
「 私たちは知っているのです。苦難は忍耐を、忍耐は練達を、
練達は希望を生むことを。希望は私たちを欺くことがありません。」
(新約聖書 ローマの信徒への手紙 5章 3-5節)
2011年3月11日14時46分に東北から関東に至る地域で歴史上類のないマグニチュード9.0の巨大地震が発生し、高さ10メートルを越す大津波が太平洋沿岸の町々を襲いました。多くの人々が命を失い、大震災から1ヶ月経った今なお、2万人近くの人々が消息不明のままです。皆さんの中にも愛する家族、友人や知人を失った人、消息が分からない人、家を失った人、避難所で困難な生活をしている、あるいはしていた人もおられることでしょう。この未曾有の災害に巻き込まれ、命を失った人々に哀悼の誠を表し、怪我をした人や住む家を失った人たちに心からお悔やみを申し上げたいと思います。さらに、先端科学の粋を集めてつくったはずの原子力発電所の事故をうまく収束できないことがこの大震災に暗い影を落としています。しかし、私達はこの絶望の淵から何としても這い上がり、どんなに困難な場面があっても、尊厳ある、希望の持てる人間社会を復興しなければならないのです。
高校生の皆さんは、この歴史上例のない大災害を鮮烈に記憶して大学に進学する巡り合わせに遭遇したのです。それは皆さんが大学で学んだことを活かして、地域社会そして日本の復興のために、「地の塩」として働きなさいという強いメッセージを受け取ったのです。経済的復興だけではありません。被災して絶望している人々、前途に希望を持てない人々を慰め、励まして心の復興を助けることも皆さんの大きな仕事です。まさに「世の光」となって地域の人々と共に生きて下さい。そのために最も大切なことは将来に「希望」を持つことです。大学はその希望の実現の手助けをする場所です。哲学、倫理、宗教、歴史、文化、社会そして音楽などのリベラルアーツ(一般教養)を十分に学び「人間力」を養い、それぞれの専門の知識と技術を深く学び「仕事力」を身につけるところが大学です。尚絅学院大学は、特に、「キリスト教精神に基づいて人間の内面を磨く」ことを建学以来の目標として教育を行い、より高い「人的総合力」を持った人間を育て上げ、社会に貢献する人材を送り出しています。
尚絅学院大学総合人間科学部は表現文化学科、人間心理学科、子ども学科、現代社会学科、生活環境学科、健康栄養学科と6つの学科から成り、人間の成長と発展、個々の人間の心と身体、人間と人間との間のコミュニケーション、人間と社会との関係、人間と自然との関係、すなわち「どのように人間が生きるべきか」という大切な課題を多面的に、そして総合的に学ぶことができます。この学びこそ大震災からの経済的復興と人間の心の復興にとって大きな働きになるのです。大震災直後から、自らも被災したにも関わらず、尚絅学院大学の多くの学生諸君が地域でボランティアとして、子ども達やお年寄り達に寄り添い、癒しと励ましの活動をしていることは本学の誇りです。
ゆりが丘キャンパスには知の創造空間としての新しい図書館が2年前に開館し、昨年は建学時の精神を伝えるエラ・オー・パトリックホームという尚絅学院の最初の校舎である明治期の建物が復元されました。また地域の中心市街地に「尚絅学院大学生涯学習センター」を開設し、地域社会との連携・地域貢献を積極的に行っています。尚絅学院大学は標高172メートルの高台の堅い岩盤の上に建ち、森に囲まれた安全なキャンパスです。希望に満ちたあなた達が、その希望の実現のために、白と緑の美しい尚絅学院大学のキャンパスで真摯に学ぶことを期待し、歓迎するものです。
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名取市災害ボランティアセンター(名取市体育館)で活躍する本学学生。
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震災当日、ライフライン・交通機関が全てストップし、自宅に帰れない、いわゆる帰宅難民が体育館などに集まり一夜を過ごした。
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震災の翌日からは、わずかに営業しているコンビニ等で多くの人が水や食料を求め長蛇の列ができた。
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地震による津波の勢いはすさまじく、沿岸の街並みは多くの住宅や車を押し流し、日中であるにも関わらず多くの人の命を奪った。
被災者からの感謝の言葉や笑顔が明日の活力につながる
なんとしても地元を復活させたい

ボランティアリーダーとして活躍する新田将也くん(子ども学科、宮城県 名取北高校出身)
震災の瞬間は、仙台港に近いアウトレットモールでアルバイトをしていました。今までに体験したことのない激しい揺れの後、「津波が来る!」と避難命令が出され、急いでお客さんを誘導し避難しました。
壊滅的被害を受けた名取市閖上は、子どもの頃から釣りなどでよく行った思い出深い所でした。自分の好きな場所が一瞬にして変わり果ててしまった事のショックと、自分が生まれ育った名取のために何かできることがないかずっと考えていた時に、名取市の災害ボランティアセンターのことを知り登録をしました。
現在担当しているのは、ボランティアをされる方の受付業務と、土砂撤去などで使用する資材(スコップ、バール、手袋、雑巾等)を現場に届けたり、汚れた資材を洗うといった資材管理業務です。家の泥除去や片づけをきれいに終え、依頼主から感謝の言葉や笑顔を頂くと「明日はもっと頑張ろう」という気持ちが湧いてきます。全面復旧するには途方もない時間と労力がかかると思いますが、「活気のある名取を復活させる!」という思いを源に、これからも活動に励んでいきたいと思います。
また、子ども学科の学生有志で避難所を回り、歌を歌って励ます活動もしています。子どもたちが喜んでくれたり、お年寄りの方が感動して涙を流していたり、こちらまでもらい泣きしそうになる場面もありました。
震災後も依然手付かずの場所が多数あります。私たちの名取が復活するためにはもっともっと皆さんの力が必要です。「何かしたいけど、どうすればいいの?」「どこに連絡すればいいの?」と思っている方や、これらの活動に興味ある方、一緒に名取の復興に向けて活動しましょう。
名取市災害ボランティアセンター(名取市民体育館)には連日多くのボランティアが集まる。写真は被災者のニーズとボランティアのマッチングをしているところ。


